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【知床・観光船事故 「元船長」が問題点指摘 通報したのは運航会社では無かった  ブラックカンパニーだ!!】


北海道の知床半島沖で、26人が乗った観光船が行方不明になった事故。この運航会社で去年まで船長を務めていた男性は「波が高く欠航すると、社長から責められた」などと証言します。事故発生時の通報についても不可解な点が。運航会社の安全管理体制はどのようになっていたのか。専門家とともに解説します。

■元船長が問題点指摘言 波が高く欠航も…「何で船を出さないんだ」
井上貴博キャスター:
去年3月までこの運航会社で船長として船を操縦していた方が、取材に応じました。今回、消息を絶った船「KAZUⅠ」にも乗ったことがあるという経験豊富な方です。

「KAZUⅠ」元船長:
去年春、従業員が総入れ替えになった。免許を持っていてもコースなど何も覚えていない。

井上キャスター:
社長以下の経営陣が変わって、ガラッと従業員の入れ替えを行ったということなんです。元船長の方が、これは伝えておきたいとお話されていたのが、それ以前は事故を起こすような会社では全くなかったですと、事故は1回もありませんでしたというような話をしてらっしゃいました。

「KAZUⅠ」元船長:
波が高く欠航しても、社長には「何で出さないんだ」と言われ揉めていた。

井上キャスター:
この元船長の方いわくですが、「やはり経営状況などもよくないので、何とか出してほしいんだというプレッシャーを感じるようなことがあって揉めていた」というような話をしていました。

■運航中止の基準は?あくまで“各社の判断”だったのか
運航中止の基準はしっかりと策定されています。知床小型観光船協議会には、今回の知床遊覧船などの運航会社も含めた4社が加盟しています。

加盟する運航会社:
4社で統一した基準は作っていません。基本的に各社の判断に委ねられています。

井上キャスター:
では、他の会社はどのような中止の基準を定めているのでしょうか。

▼加盟する運航会社の中止の基準
・波の高さ:1m以上
・風速:8m以上
・視界:300m以下
・運航途中で基準を超えた場合、直ちに引き返す


運航中止の基準は?
加盟する運航会社:
知床遊覧船も同じ程度の基準を作っていたと思う。そうしないと運輸局の許可がおりないので、具体的なことはわからないが、作っていたと思う。

井上キャスター:
ですが、出航した日というのは波が3m、風が9mと言われています。どういう基準になっていたのか、全くまだわかりません。

ホラン千秋キャスター:
それぞれの会社によってルールに多少の誤差はあったとしても、それなりにルールはあったのではないか。かなり厳しい条件の中、出ていったとも聞いていますので、なぜこんなことが起きてしまったのかというのは検証が必要ですよね。

星浩コメンテーター:
これルールがあっても、あって無きがごとしのような気がするんです。つまり4社がいると、気象条件によって「うちは行きますよ、行きませんよ」っていう競争がもちろん出てきて、かなり無理してでも出るところが結局収入を得られるわけですよね。
それからもう1つ、時期的にも早く始めるかどうかというのも、それぞれの判断に任せておけば、ある意味ノンルールで過当競争になるのは目に見えていますよね。それが実際起きたということじゃないですかね。

ホラン千秋キャスター:
あとはどんなルートを通るのかということによって、気象の範囲というのももしかしたら変わってくる場合もあるのかもしれませんが、確かに競争がある場合、このルールがどこまで実行力があったのかというのは疑問ですよね。

星浩コメンテーター:
船長の善意に任せるっていうわけには中々、人の命を預かってるわけですから。そう簡単にはいかないと思いますよね。

井上貴博キャスター:
そうすると、この協議会だけにルール作りを委ねるのではなくて、例えば国土交通省がもう少し出てとか、そういうことになるんですか。会社ごとだけだと、あって無いようなものになってしまいますよね。

星浩コメンテーター:
少なくとも、定期的にチェックをするとかそういう体制は必要だと思います。

■事故当時の無線のやりとり明らかに
井上貴博キャスター:
無線でのやりとりも分かってきました。第1管区海上保安本部の説明です。


無線の詳細なやりとり

<23日午後1時13分>
・「KAZUⅠ」の運航会社ではない、別の運航会社が「KAZUⅠ」の無線を傍受
・別の運航会社が海上保安庁に118番通報

午後1時に戻ってくるはずの別の会社の船が戻ってきていない、これおかしいんじゃないかということで、無線を調べてみるとやはりおかしいことになっているということで、別の会社が通報するに至ります。

<23日午後1時18分>
・「KAZUⅠ」が携帯電話で118番「船首が浸水している、水が入ってきている」

■無線故障の可能性も?通報したのは運航会社では無かった
井上貴博キャスター:
通報をした、別の運航会社に新たに話を伺うと次のような状況だったといいます。


無線の詳細なやりとり
<23日午後1時すぎ>
・KAZUⅠの帰港予定時刻が過ぎる
・通報をした別の運航会社が、知床遊覧船に連絡
・知床遊覧船は「うちも連絡は取れてない。携帯電話が繋がらない」と回答
・通報をした運航会社「それはおかしい」

<23日午後1時13分>
・通報をした運航会社が無線で呼びかけ
・KAZUⅠ「浸水してエンジンが停止している」
・通報をした運航会社が海上保安本部に通報

ですので、運航会社である知床遊覧船が、「KAZUⅠ」と無線で繋がっていたのかどうか、この辺りが分かっていません。

東海大学海洋学部 山田吉彦教授:
もしかすると運航会社である知覧遊覧船の無線が壊れていた、もしくは調子が悪かった可能性があります。無線連絡をしたとき、会社に誰もいなかったのではないか。
■去年も2度の事故 しかし運航停止の処分は無し
井上貴博キャスター:
また、国土交通省として何かできることがあるのかという観点についてです。
去年5月と6月、この運航会社はそれぞれ事故を起こしていました。6月に関しては今回と同じ船長が運航していたということが分かっています。

これを受けて国土交通省運輸局は、運航会社に監査を実施しました。監査を受け、会社側は指導書を作り、提出していました。このとき、運航停止などの処分にはなりませんでした。会社の判断で運航可能な状態が続いていたわけです。


運航状況に問題は?

東海大学海洋学部 山田吉彦教授:
年に2回も事故を起こすのは多すぎる。去年6月の事故について、出港後まもなく浅瀬に乗り上げる事故というのは普通は考えられない。

ホラン千秋キャスター:
取材に応じてくださった以前この運航会社で働いていた方が、「海のことを何も伝える人がいない、教える人がいない、全員総入れ替えになってしまった」と仰っていました。海のことをよく知らずにある程度の期間、運航を行っていたということになるんでしょうか。

星浩コメンテーター:
今回の場合、会社とその船長とのコミュニケーションがどこまであったのか、それが全くよく分からない。大体、無線の連絡が取れなかった原因が未だにはっきりされてない。これはおそらく、この社長さんしか分かっている人がいませんから、社長さんの口から語ってもらうしかないんですけど、未だにそこの部分がはっきりしない。それから会社全体の経営状況、コロナの影響がどうだったかという議論もあるんですけど、その辺の因果関係も全く分からない。社長さんがどう判断したのかっていうところは、ぜひ早めに会見で明らかにしてもらいたいと思います。